我が横浜ベイスターズ

三振もヒッティングも、

ホームランも大量得点も

エラーもあれば

胸のすくような遠投で射してみせる

突如火を噴くマシンガン打線の破壊力など

何でもありの「横浜ベイスターズ」

今年もセ・リーグを[R1] オモシロくしてくれる筈だ。

それでしか生き残る道が無い。

 

伝統の定評を書き出してみた。

  • 万年Bクラスの定位置
  • 誰が監督になってもAクラス入りは難しい。そもそも、どのクラスに入るかどうかで野球をやっているわけではない。結果論でモノをいう空虚な内容こそ唾棄されるべきだ。横浜の姿勢は常にハッスル・プレイである。それ以上でなければ以下でもない。ハッスル・プレーでエラーを演じ、全身でポカをやる。
  • 優勝の常連という強豪チームにも、毎年、一回以上は勝っている
  • 毎試合、勝負に関係なく。横浜の誰かが超ファインプレイを演じる
  • 二桁も得点しながら負ける
  • 1イニングに5点以上稼ぐゲームが毎年、必ず数試合ある
  • 「三冠王」がいるのに優勝できない
  • Aクラス球団のコーチには元・横浜ベイスターズの名選手もいて、所属チームの優勝に貢献している
  • 選手より監督のキャラクターが注目される
  • プロ野球の選手時代に、どうしても優勝を味わいたいと考える選手はフリーになると、別の球団に移籍して長年の夢を叶える
  • 二軍レベルのプレーヤーに天才的プレーヤーが混じっているようなチームだ
  • 二軍レベルの選手でも、超一流のファインプレイを演じて、やはり「プロ」ならではの技のこなしを見せてくれる
  • 伝統的には投手力よりも「打撃」のチームだと思う
  • ゲーム運びがいつも大味。豪快だが弱点が目立つ
  • 作戦を練っても、作戦通りに事が運ばない

 

など、チグハグが伝統の球団。パワフルなチグハグが売り物である。一生懸命にポカを演じるところに人生ドラマの悲哀が重なる。こんなチームが他にあったか。

 

 「ベイ」は、他球団が経験しないあらゆる人生の喜怒哀楽を発揮して、それを伝統と持ち味にしてきた。常勝が伝統の「巨人」や「巨人」を手本とする後追い思考や考え方は馴染まない。「横浜」は独自の哲学を持っており、しかもそれは新しい視点になってる。「先ず、勝たねばならない」という発想は横浜の視点では情けなくて古臭いのである。勝負のオモシロさではなく、勝つことの楽しさでもなく、「プロフェッショナルに徹したエンターテイナー」であること。勝ち負けは後から付いて来る。観客と共有できる人生ドラマを演じて痺れさせる名優揃いのチームこそ真の横浜の生きかたである。古いタイプの監督など、横浜に来なくても良い。

 

 最高に贅沢な舞台劇を演じる「ベイ」のゲームは楽しく、スリリングなのだ。比べて常勝チームの内容のつまらないこと。単純で薄味で、ドラマ性も迫力もなければ人生を魅了する中味がサッパリで「巨人」のマネばかりで創造性が見られない田舎の「都会コンプレックス」チームとは一緒にされたくない。

 

 「横浜ベイスターズ」よ、永遠のエンターテイナーであれ。ファンの泣かせ方を勘違いするな。いつも夢を追いかけろ。いつまで追いかけても決して捉まえることはできなくても、夢は永遠に追いかけるものだ。「巨人」などがつまらないのは、夢を追っているように見せかけて、実はポーズに過ぎないのである。魚釣りに出かけると、すぐ釣り上げてしまう。腕がいいのだろうが、すぐに池に戻してしまう。それが粋な釣りだと思っているらしい。自分に正直ではない。うまい魚を釣って、みんなで食べよう。そう思って釣りに出かけるとドッコイ、魚は簡単にかからず、エイハブ船長とモビーデイックの壮絶な戦いの展開を連想させる事態になったりして・・・。

「横浜」は本当の修羅場を演じるチームである。今年もトラ退治はやるべし。田舎の龍を叩き潰してキシメンのだし汁にしてB級ランチにしよう。  

 こんな見方もある。宝くじの一等賞に当たる人が本当にいる。信じ難いことだが、疑っても意味がない。ただし、アタリ券は買わないと当たらない。これは宇宙の法則であり原則であり、鉄則、運命の縮図として決っている。カール・マルクスは資本主義の手側をしてきしたが、現実には社会主義の有利な点も取り込んで、地球上で最も豊かで安定した社会の実現は先進資本主義国で実現した。マルクスやレーニンたちの予言は見事なまでに外れてしまった。その哲学的エッセンスにもっとも近いのが「横浜ベイスターズ・ニュー・ライトウイング」と自称する結果よければ全て善し主義の理念を掲げた新しい視点の応援グループの存在であろう。肉体と気分の絶好調のとき脳波が勢いよく燃え上がる瞬間にひらめくエネルギーを無意識のうちに発揮する。それは最もシンプルな状態で人間の行動力と判断を促すが、そのレベルのプロ野球チームが「巨人」とか「西武ライオンズ」「東北楽天」や「阪神」「広島」、「中日」といった常識を超えることができないのである。ファンも評論家も、最近のデータから先読みができるようになった、歩くコンピューターの野村克哉監督の分析能力、ガキの戦績予想の方が余程、気が効いているチンプな解説者・関根元監督などの能力では、とても「横浜ベイスターズ」の攻撃能力を当てるのは難しい。誰もが平凡で通俗的かつ保守的で判りやすい単細胞的思考しかできないでいる。もう、長い間、TVや新聞などのメディアの解説はつまらなくなったままだ。マスコミが予想する優勝チームに「巨人」を持ってくる評論家などは単に「巨人」が優勝してほしいという個人的願望をのべているに過ぎない。ワンパターンの単純思考からスリリングでダイナミックなプロ野球の魅力など、伝わってくる筈が無い。

 

 「横浜ベイスターズ」はそんな程度の評論家の予想を引っくり返すゲームを演じて熱狂的なファンを獲得しつつある典型チームだ。最も魅力があるプロ野球チームは①横浜DeNA,、②広島、「③阪神などを挙げる評論家に耳を傾けるべきではある。「ベイ」の勝利予測は全く立てられず、覚悟一本で当たるしかない。

 

 かつて「横浜ベイ」には牛山さんというスカウト名人がいて、幾人モノ有望株を日本に送り込んでいたことがあった。アメリカでよくても日本ではサッパリ冴えないというプレーヤーも少なくない。その判断が難しいのだが、「横浜」は前身の「大洋ホエールズ」から「横浜ベイスターズ」に生まれ変わるのを契機に、心機一転、牛山さんはアメリカからバリバリの現役4番バッターを引き抜いてイメチェンを行った。恐るべき破壊力を他球団が警戒し始めたときブラッグスはケガなど不調に見舞われ、持ち味を発揮できなかった。対戦チームはホッとするやら、残念に思うやら。「横浜」もアタマを抱えてしまった。その付録のような、高卒でメジャーに入ったばかりの新人をオマケに付けてもらえないかとアメリカ側と交渉。センスはかなりイケソウと前から注目はしていた牛山さんは、「エンジェルス」の若造を口説き落として「横浜」に移籍させた。ブラグスと同時入団になったが、日本のマスコミはブラッグスに注目するばかり。アメリカの「レッズ」で4番を打っていた現役のメジャーリーガーで日本中がその破壊力に期待を寄せていた。同時入団したエンジェルスの若者ロバート・リチャード・ローズはモンダイにならない存在で無視同然だった。そもそも、ブラグスとは格が違いすぎると見るのが世間の常識だ。しかし、「世間の常識」くらいイイカゲンなものはない。

 

 通称「ボビー・ローズ」は日本で野球人生を過した結果になった。しかし、外国人の契約金にしては気の毒なほど安かったといわれる。「横浜」と契約したローズはその日の夜、契約書を抱いて寝たという。

 

 特に外国から移籍する選手の戦力としての実力は蓋を開けてみるまで誰にも判らないのだ。ローズが日本で活躍したのは入団した1993年から2000年まで。その記録を思い出してほしい。

 

 まだ20代初めのボビー・ローズはエンジェルスに在籍中、移動する球団のバス事故で足に大怪我。3Aに落とされた所を当事の横浜ベイスターのスカウトが嗅ぎつけて、格安年俸35万ドルで口説きおとして契約。

 

 しかし、シーズンが始まると、メジャー4番だったブラッグスはケガに泣き、実力は未知の高卒でエンジェルスに入ったばかりの若造ボビー・ローズが穴埋めを試されることになった。ダメで元々、「横浜」はローズを今後、どのように育てるか、大きな考えどころになった。ところが、この若造はその年、仰天の好成績で「横浜」を引張り、早々と94打点を叩き出して「打点王」と「ベストナイン」に選ばれ、唐突な雰囲気の中、俄然注目されたのである。こうなると、ローズの実力をさらに確かめたくなる。高い買い物になったメジャーリーガーであるブラッグスは考えどころだ。「ベイ」は更に若いボビー・ローズに賭けた。97年にはホームラン、ツー・ベース、シングル、シングル、第五打席にスリーベースを放ってサイクル・ヒットを達成。その翌日には四球を挟んでホームランを含む4打数、4安打を記録。「中日」戦では天敵・野口から5打点を奪い、優勝を決めた10月3日では先制タイムリーを放ち、その年は打率325、打点96だ。ますます絶好調。「ヤクルト」戦では1試合10打点を記録し、サイクル・ヒット3回やベストナイン6回などの大暴れは、どの相手球団も予想さえしていなかった。

 

 しかし、彼は2001年の契約に5億円提示の噂が表沙汰になって実現できず、結局は風のように去っていった。「ベイ」にとっては100年に一度出会うような夢の天才ではなかったか。「ローズの登場」がベイの全てを象徴している。

 

 ボビーはいなくなった。でも、新しいボビー・ローズが現れるかもしれない。「横浜ベイスターズ」ファンは今年も夢を追いかけるだろう。 

 

 「大洋ホエールズ」時代からのファンである。それまでプロ、アマを問わず、野球自体に興味も関心も無かった。私がファンになった頃、投手陣は長身で細見、ユニフォーム姿がよく似合うエースの遠藤一彦がいて、超スローボールで三振を取る斉藤明夫がいてカミソリ・シュートの平松がいた。監督は歳はとっても気は若い、話題作りの巧い近藤サンだった。大柄で若い白人のジム・パチョレックとプエルトリコの伊達男カルロス・ポンセも在籍。ポンセは勝負強いパワー・ヒッターだった。プエルトリコ出身なのに、登場するときはなぜかメキシカン・マリアッチ「ラ・クカラチャ(ゴキブリ)」の軽快なトランペット演奏で登場した。メジャーから3Aに落ちたエンゼルス在籍のボビー・ローズ(1993年~2000年在籍)と共に長く「ベイスターズ」で活躍し、「ベイ」によって実力を引き出した天才たちだ。ローズはいかにも「ベイ」に相応しい活躍を残した。この球団が一番「らしさ」を見せたゲームのスーパー・スターだった。このチームが「大洋ホエールズ」から新生「横浜ベイスターズ」誕生のスターティング・メンバーとして移籍している。いかにもでき過ぎた話である。

 

 ローズの最終球団は「千葉ロッテ」だった。わずか一ヶ月足らずの在籍で開幕する前に帰国した。これも新記録だ。「横浜」退団と同時に、引退声明も惜しまれたが、その裏で「ロッテ」と契約する噂にブーイング騒ぎ。「引退記念試合」もなく寂しく消えていった。ローズがそこで引退を決意したのは、家族がこの土地に馴染めなかったのが大きいとコメント。息子の登校拒否や夫人の反対など、横浜と千葉では生活環境が違いすぎたという。

 

 当時の私は職業漫画家として日も浅く、比較的ひまだった。安い原稿料でホエールズの親会社「大洋漁業」の社内報のイラストを毎月、引き受けていた。

 

 テレビでは「ホエールズ」戦のデイゲームを流していて、ストッパーの斉藤明夫が滝のような汗を流して力投していた。「斉藤、打たれました! 斉藤、打たれた! 打たれた!満塁でエ~す。ノーアウト満塁になってしまいました」とアナウンサーは絶叫していた。

 

 この時代だけに限らないが、何気なくスポーツ紙を見ていて気掛かりなのはリーグを代表する名選手がこれだけ揃っているのに負け試合が多い不思議さであった。勝っていても負けゲームの方が目立つチームって一体どういうことだろ。いつも後一歩のところでコケるということか。

 

 フランスの友人が、まだ野球を見たことが無いというから、ハマ・スタでの巨人戦に誘った。来日して6年になるフランスのジャーナリストは、日本人の野球大好きぶりが理解できないというから、「横浜での巨人戦」なら粗っぽい展開が判りやすいと思ったのである。相手の「巨人」はエースの桑田だ。「横浜」は誰が投げていたか忘れた。誰でも似たようなものだ。3ゼロで追いかける展開で横浜が特大のホームランを打った。いかにも「ベイ」らしいく先の見えない気まぐれ的なドラマを一発。7回に高木豊と屋敷が出塁し、ポンセがバッターボックスに立った。スピードの無いフラフラした打球が時間をかけてレフトの足元に転がり、俊足の二人が帰還。送球はセカンドに向けられたがポンセの足がわずかに速く「セーフ!」。彼もホームに帰れば同点だ。ライト側が盛り上がった。フランスの友人も飛び上がって大声援、メガフォンを叩いた。銃身が錆びついていることが多い「ハマのマシンガン」に火が付けば一挙に盛り上がる攻撃に、マウンドの桑田は例によって何事かぶつぶつツブヤキながら捕手のサインを確認していた。

 

 実際のところ打席は誰でもよかった。セカンドのポンセは無謀なほどリードをとり、そのまま3塁を落とすつもりは明らかだった。バットを振ったら白球がニ遊間を抜いた。前進してきたセンターが事もあろうにボールを後に逸らせて「はい、これで同点。ヤッターツ」「 ブラボオ」だ。結局、勢いにのった「ベイ」が8回にホームランを放って「巨人」を突き放した。いかにも能天気な「横浜」らしい賑やかなゲームをフランスの友人に見せることができた。ボクたちは満足だった。事前に野球のルールをイラストで説明して渡していたので、フランスの友人はゲームの展開がよく判ったと嬉しそうだった。それに球場独特のナマの雰囲気はテレビでは絶対に伝わらない。お茶と弁当を買い、食べながら、呑みながら青空、夜空の下でプロの名人芸を見物するなんて、家の食卓でビールを飲みながらテレビ中継を眺めるのとは比較にならない気分である。特に薄暗いスタンド下通路から、一挙に視界に飛び込んでくるスタジアムの広々した空間は、現地でなければ見当も付かなければ興奮も理解できないだろう。プロ野球はスタジアムで見るべし。ひとりでも良し、友達を誘ってもよし。

 

 ボクはひとりでもよく出かけた。横浜スタジアムまで順調にいって1時間、乗り換えは池袋と東京駅が辛いが、現在は私鉄相互の乗り入れで乗りかえなしで1時間で着く。

 

 関内駅を挟んでスタジアムとは反対側に馴染みの鉄道模型店があり、試合開始の前に立ち寄ってマスターとオシャベリ。模型界情報も仕入れるのであった。

 

 「ベイスターズ」にとって勝負は結果論。勝っても負けても常に人生ドラマを演じる唯一の劇場型球団。あるいは、ジャズ演奏のような即興でアンサンブルを楽しむチームであり、あるいは「宝くじ」のように結果がまるで判らないところでワクワクさせる。もちろん、どのチームも結果は判らないが、しかし、だいたい、当日の予想はつく・・・というのは思い込みで、過去のデータなどアテにならないのが「横浜戦」なのだ。あてにならない奴が力投し、当たっていないのが特大ホームランを打つのが「ベイ流」である。

 

 「宝くじ」は買わないと当たらないけど、買っても当たらないところがソックリだ。このイヤラシサは「巨人」「阪神」といった伝統球団より強烈な印象で観客を痺れさせる。5連敗、6連敗も演じられると通常のファンは本当に怒りだすだろう。「入場料を返せ!」と怒鳴りつけるファンがいてもオカシクない。でも「ベイスターズ」ファンは外れ籤を宝籤売り場にもって行き「金返せ!」などと言わない。相手チームの応援席はまるで「宝くじ」が当たったような盛り上がりであっても一等ではなく、「ベイ」を僅少差で破った程度が殆ど。たまたま、その時のクローザーが不調でサヨナラ・ヒットで逆転されたというケースが「ベイ」には目立つということであって、大騒ぎすることではない。

 

 評論家たちは、「ベイの投手陣の非力」を指摘するだろうが、後追いコメントなどは素人でも言える。「ベイはこれで9連敗。昨年の記録に並びました」という実況中継のアナウンサーのコメント。情けなくて呆れるような戦績。プロとして恥ずかしく、相手にも失礼ではないかとお節介な人は意外と多い。「ベイ」の9連敗など私は別に驚かない。この調子だと10連敗も軽くいけるんじゃないかと呆然と眺めるベンチの厳しい表情も想像できる。それは画家やイラストレーターにとって、勝ち続けて嬉しそうな表情よりも遥かにドラマチックな表情の肖像画になる。素晴らしい!

 

 負強肩ライトの好返球でホームに突っ込んだランナーを仕留めるファインプレーも、プロだから、ちゃんと演じている。ショート・ストッパーとセカンドの軽快なジャンピング・スローによる併殺も見事。まさにプロが演じる胸のすくような美技は「横浜」のプレイヤーもやってのける。カネを払って見るだけの価値は十分。なのに、何故負け数が桁違いに多いのか。相手が僅かに強かっただけか。

 

「ベイスターズ」は、いつもこの調子をキープできるわけではない、ということである。しかし、それを言うなら他球団も同じである。但し「横浜」は負けゲームが多い。負けゲームといっても13対11という得点。いつも大量点勝負が目立つ。逆転で負けるのがいつものパターンだ。と、思っていると、逆転の満塁サヨナラ・ホームランも珍しくないから、油断も隙もないのが「横浜流」だ。スゴイの一言で済む話ではない。こんな勝負は常勝チームでもシーズンに一度、あるか無いかだ。ところが「横浜」には、こうした勝負が目立つから、サッパリ訳がわからない。判らないところに人生ドラマが重なる。「横浜ベイスターズ」はまさに人生そのものを演じてみせるチームである。自分の生きかたや生き様を振り返り、明日を想像すると、まるで「ベイスターズ」ではないか。

 


 [R1]